作品ページ
【着想】
これまでよりいいアクリル絵の具を初めて使うため、どんなもんかと実験的にワクワクしながら描いた作品。そんな作品のテーマが「孤独」とはなんだか愉快だな。
この絵を描く少し前から、アートの場や遊び、コミュニケーション、生きることについて、そして、自分は何をしたいのか、何を思うのかという部分について本格的に考え始めている。この頃から自分の頭で物事を考え、自分の感覚で物事を感じるようになっている。本当の意味で自分の独自性を養い、オリジナルの道を歩み始めた時期だと思う。
可能性に満ちた選択をすること、自分だけの道を行くことを自分に許しはじめていたし、未来に対しては恐れや不安よりもワクワクと希望のほうが大きかった。しかし、大学に行けば、自分はほとんどの人間と異なる方向を向いていることを実感し、それでいいとわかっていても、さみしくなった。この頃は特に敏感で繊細で、人と話すほど、自分は自分であろうとするほど、どうしようもない孤独を感じていた。人とは違う自分を肯定し、その個性を伸ばそうと思っていながらも、やはり孤独でどうもさみしい。楽しいがさみしい、というアンビバレスな心境に陥っていた。この頃のメモに次のような言葉が記されている。
“孤独とは、相手に必要とされていないとき、つまり相手を変化させられないときに感じるものだ―これはどちらかまたはお互いが相手に心を開いておらず、感情の交換ができていない、コミュニケーション不和に陥った状況である”
“愛とは変化を起こすこと”
“孤独感は自分という存在がオリジナルである証であり、どうあがいても人は唯一無二/孤独でしかない。孤独を感じたときに、それを恐れて、修正してしまって、周りに合わせるならば、自分というオリジナリティは傷つけられ、自己疎外が起こる”
“孤独を感じたときに、ナンセンスや愛によって自分を肯定できるかどうかが重要である”
孤独について色々考えを巡らせていることがわかる。このアンビバレントな状況を打破するために、孤独を自分の中で昇華しようとしていた。その過程の一つとして、この絵ができたのだといえる。そんな重苦しいような背景はあれど、わたしはこの絵をワクワクしながら描いた。
【構想】
この絵は案をしっかり練っている。もちろんイメージは直感的に湧いてきたものではあるが。だが、はじめのイメージと完成形は結構違う。
【作品と学び】
描きながら考えていたことは、なぜこれが孤独なのかはわからないが、
“孤独は恐ろしいものではなく、豊かで賑やかなものであること”と“孤独を切り裂くのはナンセンスである”ということであった。
色鮮やかな部分が非孤独を、ネギのような物がある白黒の部分を孤独を表していると感じる人が多いかもしれない。しかし、わたしとしてはどちらかというと反対で、鮮やか部分が孤独、つまりひとりひとりを表していて、ネギは孤独を肯定も否定もしない、よくわからないものとして存在する。
この絵を飾ってしばらくした後、孤独とナンセンスの関係についてわかったことがある。
“人はそれぞれ人には理解されえない、自分もわからないようなナンセンスな部分を持つ。それこそが個性なのであり、共有出来ない部分を持つからこそ孤独なのだ”ということである。
この絵を描いてから、わたしはなんと美しい孤独を持っているのだろうか、という気分になり、しばらくは孤独への恐怖やさみしさが和らいだ。孤独はむしろわたしを鼓舞してくれるものとなった。
この絵は遠くからでなく、近くからじっくり見てほしい絵である。